手続き概要


 

交通犯罪,特に,被害者死亡の事案では,実況見分は,加害者(被疑者)を立会人として行われ,その結果として,加害者の言い分を色濃く反映した「実況見分調書」が作成されてしまいます。そして,調書がいったん完成してしまうと,それを争うことは,至難の業です。

 

そこで,事件発生からできる限り早期に,被害者の側でも,証拠収集(例えば,事件の目撃者探し)を行い,その収集した証拠を捜査機関に提出する必要があります。そのサポ ートを弁護士が行います。

交通犯罪の場合,告訴がなくとも,検察官は,被疑者を起訴できますが,告訴があれば,警察・検察は,より慎重に捜査します。その意味で,加害者を告訴することは,重要となります。告訴状の作成は,まさに弁護士の仕事です。
被害者(遺族)は,警察や検察から,事件の発生状況や加害者に対する想い等を聞かれます。被害者は,初めて警察署や検察庁へ行っても,上手く自分の言いたいことを,伝えることができません。そこで,弁護士が,事情聴取に同行し,場合によっては,聴取の場に同席の上,被害者にアドバイスをし ます。

被疑者(加害者)が身柄拘束(勾留)されていない場合,事件がなかなか検察庁へ送られず,また,事件が検察庁に送られても,被疑者を起訴するか否かの決定には時間がかかります。

 

そのため,できるだけ早く被疑者を適切な刑罰を科して欲しい被害者(遺族)は,焦燥感をいだくことがよくあります。このような場合に,弁護士が,警察や検察に対し,捜査を早く完了させ,被疑者を正式起訴するよう要請します。

交通事件の場合で,被害者が死亡していても,必ずしも,加害者(被疑者)が,正式起訴(公判請求)されるわけではありません。

 

例えば,被害者が道 路に飛び出したことから,被疑者を罪に問えない(裁判で有罪とならない)可能性があると検察官が判断すると,被疑者は,嫌疑不十分で不起訴となります。その判断のチェックを行うのは,被害者(遺族)またはその委任を受けた弁護士以外には見当たりません。

交通事件で,検察官が,加害者(被疑者)を不起訴とした場合,検察審査会へ,その審査を申し立てることができます。

しかし,検察審査会も,検察庁に保管されている刑事記録を基に不起訴処分の当否を審査しますので,やはり,まず,被害者側の証拠収集活動が重要となります。

被害者やご遺族等の方々が刑事裁判手続に直接関与することができる制度,つまり,被害者参加制度があります。 つまり,刑事裁判に被害者が参加できるということです。被害者参加人は,刑事訴訟の当事者となるわけではありませんが,一定の限度で,訴訟行為を行うことができるのです。

 

ところで,被害者参加人は,必ずしも弁護士に上記活動を委託する必要はありません。しかし,例えば,被害者論告・求刑は,証拠に基づいて行う必要があるので,弁護士のサポートを受けた方がよいのです。

 

この点,被害者に資力が乏しい場合(財産が150万円もない場合)は,国が費用を出して,被害者が特定の弁護士を指名して,その弁護士に被害者参加をサポートしてもらうこと(国選被害者参加弁護士)もできます。

 

現行の被害者参加制度には,限界や問題点も多々ありますが,被告人(加害者)に対し,法廷で,一言,言ってやりたい,被告人を少しでも重く処罰して欲しい,と思われる被害者(遺族)は,被害者参加するべきです。

 

Q1 被害者参加制度とはどのようなものですか。

 

Q2 誰が被害者参加制度を利用できるのですか。

 

Q3 どのような手続で刑事裁判に参加するのですか。

 

Q4 希望すれば必ず刑事裁判に参加できますか。

 

Q5 被害者参加人は刑事裁判でどのようなことができますか。

 





損害賠償命令制度とは,刑事事件を担当した裁判所が,有罪の言渡しをした後,引き続き損害賠償請求についての審理も行い,加害者に損害の賠償を命じることができるという制度です。

 

損害賠償請求に関し、刑事手続の成果を利用するこの制度により,犯罪被害者が,刑事事件とは別の手続で民事訴訟を提起することに比べ,犯罪被害者の立証の負担が軽減されることになります。 要するに,損害賠償命令(申立制度)は,被害者から見ると,普通に加害者に対し民事裁判(損害賠償請求訴訟)と提起するよりは,いちいち証拠を提出する手間が要らず,また,申立書に貼付する印紙代も民事訴訟の提起よりは安価であることから,便利で安上がりであるということです。

 

さらに,刑事事件を審理し,事件の真相を詳しく知る刑事裁判官が賠償額等を決めることも,被害者からすると手間がかからないということです。

 

Q6 どのような場合にこの制度が利用できるのでしょうか?

 

Q7 制度を利用する場合の手続はどのようなものですか?

 

Q8 刑事裁判に参加しないと、損害賠償命令制度は利用できないのでしょうか?

 

Q9 損害賠償命令の申立てをした事件について、刑事裁判で無罪判決が出た場合はどうなりますか?

 

Q10 控訴審が行われている高等裁判所に,損害賠償命令の申立てをすることはできますか?

1 適正な賠償額の獲得は,非常に重要です。

 

例えば,幼子を遺して亡くなった被害者(父親)のケースでは,賠償金は,子の将来の生活を保障するため,極めて重要です。また,被害者が重度後遺障害(例えば,遷延性意識障害)を負った場合には,莫大な介護費用がかかります。その費用をまかなうためにも,適正な賠償金は是非,必要です。

 

2 被害者は,損害保険会社に苦しめられる。

 

しかし,加害者に代わって賠償金を支払う損害保険会社は,簡単には,保険金(賠償金)を支払いません。自動車運転者向けのコマーシャルでは,対人賠償は無制限です,だから安心です,と宣伝しています。しかし,それは,あくまで理論上のことで,実際は,被害者からの損害賠償請求額を全額支払うことはなく,しかも,その交渉の過程で,その担当者が被害者を苦しめるのです。

 

つまり,損害保険会社はあの手この手を使って,賠償金(保険金)を減らそうとします。被害者は,損害保険会社の担当者と交渉するだけで疲れてきて,仕方なく,低額の賠償金で示談させられています。

 

しかし,被害者は,弁護士と協力して損害賠償請求することによって,適正な賠償額,つまり,被害者が加害者を裁判所に訴えた場合に認められる賠償額を保険会社(加害者)に支払わせることができます。

 

検察官は公益の代表者であることから,多数の市民の声を結集すれば,その声を無視できない場合があります。その意味で,例えば,被疑者(犯人)の正式起訴を求める署名活動も有効な場合があり,弁護士は,その活動をサポートします。